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漢字検定や試験ででる紛らわしい漢字を、パーツ別に解説。
形が似ていて紛らわしい漢字を一網打尽に覚えることができます。
<以下は未出版原稿からの抜粋です>

【仕と任】

「壬」がわかれば



仕   「*」(人)と「士」(王に使える兵士)
【読 み】し 《仕》シ  ジ  つかえる /つかまつる
【口唱法】イを書いて 下を短く十一(じゅういち)と書く
【組立て】イ(にんべん)に 士(シ・さむらい)

「士」はおのを立てかけておいた形で「武器」の一種です。武器を持ち王に使える兵士のことを「士」といいます。それに「にんべん」をつけて「人」を強調したものが「仕」です。王や目上の人のそばにいて、護衛をしたり用を足したり、仕えたりする人のことで「仕える・する」などの意味を表します。

【つかえる】のちがい——
仕…主人につかえる(仕官)
事…目上のものをあがめてつかえる(師事)

《意 味》
〈1〉目上の人のそば近くにいて用を足す。官につく。家来になる。つかえる。みやづかえ。「仕官・仕途・出仕・奉仕・勤仕・給仕・致仕・沖仲仕(おきなかし)」
〈2〉日本語で、つかまつる。「つかえる」「する」のへりくだった言い方。
〈3〉動詞「す」(為)の連用形「し」に当てて用いる。「仕掛・仕方・仕組・仕切・仕入」


任  「*」(人)と「壬」(背中に荷物を背負う)
【読 み】にん 《任》ニン  まかす /まかせる
【口唱法】イを書いて、ノ(の)に よこぼうで たてに よこ
【組立て】イ(ニンベン)に ノ・士(の・シ・ニン)

絵を見てください。右側の人が荷物を背にしています。人が大切な荷物を背負う形というのは、大切な役目をつとめることを表します。ですから「任」には「担う」とか「耐える」という意味がありますし、さらに「役目・務め」などの意味もあります。

【たえる】のちがい——
任…じぶんで引き受けてたえること(任務)
耐…たえしのぶこと(忍耐)

《意 味》
〈1〉物をになう。役目をつとめる。まかせる。「任用・任官・任命・任務・任免・任期」
〈2〉まかせられた役目。つとめ。「任に赴く」「大任・辞任・解任・責任」
〈3〉思うとおりにさせる。まかせる。ゆるす。「一任・放任・任意」

【弟と第】

ひもやツルが巻き付く



弟   「弟」(棒くいにひもを巻きつけた形)
【読 み】てい 《弟》テイ  ダイ  デ /おとうと  おと
【口唱法】ソ コと書き、ノ(の)に続けて かぎをはね、たてぼう書いたら 左に払う
【組立て】ソ に 弓(ゆみ)を書き たてぼう ノ(の)

この字は「兄」に対する「弟」の意味で使われていますが、本来は武器の柄などにひもを上から下へ、または下から上に順にぐるぐる巻くことで「順序、次第」の意味を表します。弓に弦を巻くのと同じようなものです。子どもが多いとき、生まれた順序によぶので「兄弟」の「おとうと」の意味になり、「順序」の意味には「第」が用いられるようになりました。

「弟」の意味の言葉には「弟妹」「舎弟」「子弟」などがありますし、「門人・でし」の意味には「弟子」「子弟」「門弟」などがあります。今でも、田舎などでは残っているところがあるようですが、同姓の年下のものや、末っ子を「弟」と書いて、「おと」といいます。この使い方の言葉としては、手に二本の矢を持って弓を射るとき、二番目に射る矢のことを「弟矢」(おとや)といいます。
「弟」のつく字で、「悌」は「目上の人によく仕える」ことです。また、JISコードには入っていませんが、「いもうと」とか「弟嫁」の意味には、「女へん」に「弟」と書いた字があって、この字も「テイ」と読みました。「女へん」に「以上」の「以」と書くと「兄の嫁」です。二つを連ねて「テイジ」と読み、「義理の姉妹」の意味でした。                              
《意 味》
〈1〉親が同じで、あとから生まれた男子。おとうと。⇔兄。「兄弟・弟妹」
〈2〉師について習う者。「師弟・子弟・門弟・徒弟・高弟・弟子(ていし・でし)」
〈3〉話し手自身の謙称。「小弟」


第    「竹」(たけ)と「弟」(じゅんじょ)
 【読 み】だい 《第》ダイ /テイ        
【口唱法】ケを二つで コを書いて、 ノ(の)に続けて かぎをはね たてぼう書いたら 左に払う
【組立て】竹(たけかんむり)に 「ソ」のない弟(おとうと)

「弟」は棒につる草が巻きついた形です。「第」は「たけかんむり」がありますので、竹に草のつるが下から順に巻き付いたことで、「物事にも順序、次第がある」ということから「順序」の意味になり、「次第」「第○番目」などと使われるようになりました。「及第・落第」などというときの「第」は、中国の昔の官吏登用試験などで優劣の順序を定めること(「科第」という)をいったところから使われてきました。

《意 味》
〈1〉物の順序。ついで。「次第(しだい)」
〈2〉物の順序を表す数字の上につける語。「第一義・第三次・第二回・第五巻・第三者」
〈3〉やしき。立派な家。「邸」に通ずる。「第宅(ていたく)・聚楽第(じゆらくだい」
〈4〉中国の昔の官吏登用試験。転じて一般に、試験。「科第・及第・落第」

【貝と具】

「よこぼう」のあるなしで



 貝    「貝」(こやすがいの形)
【読 み】ばい 《貝》バイ/かい 
【口唱法】たて かぎ よこ よこ、 そこ閉じ ハ(は)
【組立て】目(め)に ハ(は)をつける

この字のもとになる貝は、子安貝とも二枚貝といわれますが、ここでは子安貝の形をとりました。中国はとても広い国なので、昔は海を知らない人々もいました。そのため、貝はたいへん珍重されました。周代の中ごろまで、貝が貨幣の役目をしていましたので、お金や財産に関係する字にはこの「貝」という字が使われています。音読みは「バイ」ですが、常用漢字の読みでは訓読みの「かい」だけが認められています。

《意 味》
〈1〉かいがらのこと。また、それを持つ下等動物。「貝殻(ばいかく)・貝貨」
〈2〉〈ア〉浅海の砂地に住む巻きがい。殻は貝独楽(ばいごま・べいごま)や貝細工の原料に、肉はつくだ煮などにする。
   〈イ〉ホラガイ。


具   「具」(貝を両手で持つ形)
【読 み】ぐ 《具》〔具〕グ  そなえる/そなわる つぶさ
【口唱法】たてぼう かぎで よこ三本、よこぼう長く かなのハ(は)を書く 
【組立て】目(め)に よこ一で ハ(は)

宝やお金など「貝」をおぼんに載せ両手でささげ持つ形から、「供え・供える・そなわる・そろっている・道具・うつわ」などの意味を表します。ですから、「具」には、ある物事を達成するための「道具・手段・手だて」の意味があります。

汁に入れる野菜とか、五目などのネタも「具」といいますが、あれは、ある料理を達成するために必要な手だて、手段というところからきた言葉でしょうか。
【そなえる・そなわる】のちがい——
供…品物などをそなえて用に立てる(供給)
具…事物が完全にそなわる(具備)
備…前から用意してそなえておく(予備)

《意 味》
〈1〉必要なだけそろっている。そろえる。十分に持つ。事こまかに。つぶさに。「具足・具備・具有・具体・具象・具眼・具現・具申・具陳・不具」
〈2〉常にそなえておく器物。「器具・道具・用具・家具・表具・馬具・武具・文具・寝具」
〈3〉道具。手段。「政争の具に利用する」
〈4〉料理で、きざんで汁や五目ずしなどに入れるもの。「具をのせる」
〈5〉衣服・器具などの一そろいになっているものの数を表す語。「よろい三具」
【由と曲】……「木の実」と「かご」のちがい

【由と曲】

「木の実」と「かご」のちがい



由  「由」(木の実が枝にたれている形)
【読 み】ゆ 《由》ユ  ユウ (イウ) ユイ /よし  よる
【口唱法】たて かぎ たてぼう、よこ二本
【組立て】

実った木の実を、枝の部分だけズームアップしてみました。この枝には実が四個もついていました。それが「由」という字です。「枝につく実」ということから「よる・拠り従う・いわれ」などの意味になり、植物が「芽」↓「花」↓「実」という筋道をたどることから、「できあがるわけ、出所・由来」の意味になりました。この字を使った熟語には、「由緒」とか「由縁」(ゆかり)などがあります。

《意 味》
〈1〉よりどころ。よってきた筋みち。出所。いわれ。わけ。「由来・由緒・由縁・来由」
〈2〉よる。したがう。「自由(じゆう)」


曲   「曲」(つるや竹などを曲げて作ったかご )
【読 み】きょく 《曲》キョク  まがる  まげる /くせ くま つぶさに
【口唱法】たてぼう書いたら かぎを曲げ、たてぼう二本に よこ二本
【組立て】                                                                             
竹や植物のつるなどで編んだ「かご」の象形です。「かご」は竹を無理に曲げて作ります。そのためか「曲がる・当たり前でない」などの意味を表します。日本では、「曲芸・軽業」などの意味にも使っています。

《意 味》
〈1〉まっすぐでない。よこしま。まげる。⇔直。「曲折・曲直・曲線・曲解・邪曲・湾曲」
〈2〉こまかい一つ一つの部分。すみ。くわしい。「委曲」
〈3〉変化のあるおもしろみ。音楽のふし。「何の曲もない」「曲技・曲芸」
〈4〉〈ア〉音楽上の作品。「曲を作る」「楽曲・名曲・序曲・編曲・交響曲」
   〈イ〉音楽上の作品を数える語。
〈5〉詩の一体。「春風馬堤曲」
〈6〉屏風(びようぶ)の仕立て方を言う語。「六曲一双」