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心を育てる絵本

下村 昇・著 / 勉誠出版・刊 / ¥1200+税

本の好きな子に育てたいと思っているお母さん!「これ、よかったなあ」と
あなたが思った本ならば、きっと子供も一緒に楽しめるはず。
おススメの絵本の紹介や読み聞かせ方、選書のノウハウから読書指導の仕方まで。
子育て中のお母さんから文庫活動や読み聞かせ運動をしている方にも必読の一冊!



   はじめに

 これは「絵本ほど子育ての知恵がちりばめられている育児書はない」という考えのもとに書かれた、お母さんのためのもう一つの『絵本活用術』です。絵本というと、とかく子供の読み物と思われがちですが、いやいやどうして、絵本こそは、かつて子供であったあなた自身の心の糧であり、そしてまた、母親のための「最良の育児書」なのです。
 「子供にたくさんの本を読ませたい」と考える母親は多いようです。 確かに読書は大切です。しかし、なぜ、読書が大切なのでしょうか。こう問われると「だって子供のころから〈本を読め、本を読め〉って、親にも先生にも言われて育ってきたじゃない。本を読むことが大事だからでしょ!」といいます。これでは答えになっていません。だから、「なぜ、大事なのか」って、聞いているのです。
「だって……ねえ」
 こう、口ごもるお母さんがいます。そうした方には、是非、この本を読んでいただきたいと思います。全編を通して「なぜ、お母さんに絵本を薦めるか」ということが分かり易く書かれています。 
 現在、お茶の間や書斎を使って、近所の子供たちのために文庫などを開いているお母さん、また、これから地域で文庫活動などをしようとしているあなた。是非、この本をお読みいただきたいものです。さらに自信を深くして、それらの活動がし易くなることと思います。
 ところで、「本はいい」とはいっても、闇雲に数多く読めばいいというものでもないようです。わたしたちは限られた時間の中でやりくりしながら生活しています。その限られた時間の中での読書です。
 どんな本を子供に読ませたらよいかと悩むお母さんが多いといいますが、もう悩むことはありません。あなたが読んで「これ、よかったなあ」と思った本を子供に読ませてください。でも、こういう言い方にちょっと心配もします。なぜかというと、「子供の読む本は、親が読むものではない」と思っていらっしゃる方が案外多いからです。
 子供の本の中でも、ことに「絵本」は子供だけのものと考えるようです。大人が、人前で絵本を読んでいたらおかしいでしょうか。みっともないでしょうか。そんなことはありません。わたしは、通勤の行き帰り、電車の中で読みます。すると、サラリーマンふうの人も若いお嬢さん方ものぞき込みます。みなさん、実は絵本には興味や関心が高いのです。
 絵本はあなたの心を癒してくれます。そしてまた、あなたの子育ての悩みを少なからず解消してくれます。絵本には、そんなすばらしい効果があるのです。
 あなたが小学生のお子さまをお持ちのお母さんなら、〈絵本をこんなふうに活用すると、「我が子の読書指導」にも役立つし、「あなた自身の喜び」にもつながりますよよ〉ということがこの本には書かれています。
 もしあなたが、乳幼児をお持ちのお母さんで、「ただいま、初めての子育て真っ最中!」という方でしたら、それこそ、この本を読んでいただきたいものです。絵本の中には、お母さんのための「子育ての知恵」がいっぱいつまっています。だからこそ、ヤングママのあなたに読んでいただきたいのです。
 初めての子育て経験ではないというお母さんでしたら、ちょっと目次の第3章を見てください。そして、第3章の項目のどれかに当てはまる悩みがありましたら、まず、そこを読んでみてください。そうすると、この本でいっている「子育ての知恵」とはこういうことかということがわかり、「なるほど」とうなずけることと思います。
 あなたが、もし、絵本がひとりで読めるようになったお子さんをお持ちのお母さんでしたら、(ことに小学生のお子さんをお持ちのお母さんなら)第4章が特に参考になるかも知れません。そこには絵本を読むコツが書かれています。第4章によって絵本のも看取り方を知った上で、あなたが読んで感銘を受けた本を子供に読ませてやってください。
 そうして、子供が読み終わるころ「〇〇ちゃん、あそこのところ、どう思った?」と聞いてみてください。「お母さんはこう思ったんだけど…」ということばを添えると、きっと子供は「おやっ!お母さん、変わった」と、目を輝かすことでしょう。そうしてもう一度、真剣に読みなおすでしょう。これだけで子供への読書指導は大成功といえるでしょう。
 「絵本はあなたのためにある」のです。子供への橋渡しばかりでなく、あなたご自身の子育てに役立つことは、本書の中で何度も例をあげて触れています。こんなにすばらしい絵本を子供だけのものにしておくのはもったいない限りです。
 大人の本は、読み終わった後で子供に回すということはできないものが多いようですが、絵本でしたら、しかも、あなたが読んで感銘を受けたものでしたら、安心して子供に与えられます。
 子供ばかりでなく、あなたのパートナーにも読んでもらってください。そして、お二人でその本について語り合うことによって、家庭教育も子育てについての夫婦の基本方針なども確立してくることでしょう。
 そうなれば、たった一冊の絵本から思わぬ家族の信頼感が高まっていくことにもなります。
 初めのほうでも書きましたが、文庫活動に熱心に取り組んでいらっしゃる方、また、地域の活動に積極的に参加し、市区町村や地域の図書室とか公民館などでボランティア活動として、熱心に紙芝居や子供への絵本の読み聞かせをしているあなた。この本を手にとってくださったこの機会に、もう一度、本書によって読書や絵本についてのおさらいをなさってみてはいかがでしょうか。そして、あなたの友達や子供たちに読書のよさを教え広めてやっていただきたいものです。
小学校の先生方、毎日が多忙だとは聞きますが、時間はいろいろな工夫ややりくりによって作られるもの。給食の時間でも朝の会を利用してでも、あなたの機転を働かせて読み聞かせの時間を作ってください。国語の教科書による授業では得られない感化が与えられることだと思います。絵本に読み親しんで育った子供は各ページ全体を関連づけてみる習慣がついていますし、文字ばかりを追うことをしません。きめの細かい読みもできるようになっています。感性の豊かな子供たちと学習指導を営むのは教師にとっても子供にとっても楽しいものです。毎日、わずかな時間を生み出しての読み聞かせに、子供たちは目を輝かせて、心待ちにすることと思います。そうして、きっと、先生ご自身にもすばらしい幸せをもたらしてくれるものと思います。是非、先生ご自身がたくさんの絵本を読んでください。そして、子供たちにもあなたの感銘を受けた絵本を紹介してやってください。
 本書によって、すべての方が今持っているすばらしい生活の上に、さらに、もう一つの世界を広げてくださることを祈っています。


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