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「心配めがねの物語」

下村昇・著 井上正治・画 / リブリオ出版・刊 / 1000円(税別)



めがねの問題で困った女の子。どうしたらいいか?クラスのみんなが考えます!

著者「あとがき」より
子供はいろいろな悩みを持っています。その悩みの中には、大人からみると、とるに
足らないことのように思える問題もあります。しかし、それこそが、子供にとっては
重大なことなのです。昨今、そうしたことから尊い命までも犠牲にしたニュースが続きました。
 そこまではいかないとしても、問題によっては、子供自身のみならず、親さえも、
どうしたらよいかわからないという事がらにも遭遇します。そんなとき、「先生、どうしたら
よいでしょう」と担任教師に相談を持ちかけても、これといった名案も得られないまま、
「困りましたねえ」でごまかされてしまいます。
 子供社会を見ても、大人と同じです。
勉強のできのよくない子をバカにしたり、いじめたりする子供、人の欠点をあからさまに口に出し、
冷やかしたりする子供、腕力にものをいわせる子供……いろいろな子供がいます。
そうした子供たちの生活をふまえて、どう生きなければならないか、ということを問題にしなければ
ならないのが親ですが、子育ての仕事の大きなものの一つが、親の精神活動だと思います。
 どう生きるか──について語ることは、とても難しいことです。
しかし、その難しい「どう生きるか」について、考えさせてくれるものの一つに、文学作品があります。
 文学作品は、子供の「うちにひそむもの」を引き出し、子供の思想、感情の発達に影響を与えます。
子供たちが優れた作品に感動するのは、そこに表現された言葉を通して、
主人公や登場人物の感情の中に自分を見いだすからです。
 いじめっ子、いじめられっ子、ひいては、子どもの自殺など、こうした問題は後を絶ちませんが、
それだけに親にとっても、どうしてやればよいのか悩みます。
そうしたとき、子供たちをいったんの問題から引き離してやるのです。そして、客観的に書かれた
作品の中から、自分たちの生き方を求め、心の中に積み重ねさせていかせるのです。そうして、再び
現実の問題をちがった角度からみさせるのがよいと思います。
 わたしは一人の女の子がめがねの問題で困った状態になったとき、この話『心配めがねの物語』を
作って、子供たちに読ませることにしました。そして、「あなたなら、この続き、どんな話になる?」
と問いかけて、続きを書かせました。それがこの「心配めがねの物語」のもとになっているものでした。
本書が子どもたちの心に通じ、友情を育みながら、今の子どもたちが住む次代の日本を、温もりの
あるものにしていく一助になれば幸いです。あなた方の時代を、あなた方が「どう生きるか」は、
あなた方自身の心に根深く住み着いていることがらです。一人ひとりの心の中も、かけがえのない
この地球も、きれいなものに浄化してほしいと思います。


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